Sports & Health

#スポーツ文化 #地域づくり #トレーニング科学 #低酸素トレーニング #医療機器 #人工関節

スポーツは心と体の健康をつなぐ架け橋。身体を動かすことで、身体機能の向上や心身のバランスが保たれるほか、日々の生活に活力と幸福感を与えます。また、オリンピックをはじめとする社会的なイベントとして、個人だけでなく、社会全体に活気を与える役割も担っています。兵庫県立大学が取り組む健康で豊かな未来のための研究をご紹介します。

誰もがスポーツを楽しめる社会をつくる

伊藤 克広教授

188体育平台商経学部所属(研究者情報はこちら

日本では、スポーツは学校の体育の授業や部活動で行うものという印象を持っている人が多いように思います。そのため、「体育の成績が悪かった」「運動がしんどかった」という過去の記憶から、スポーツという言葉に対して、今も苦手意識を持っている人も少なくありません。

しかし、本来、スポーツは楽しいものです。その楽しみ方も自由で多様であるべきだと考えています。例えば、スポーツを「見る」こと。スポーツを「プレーする」ことは苦手でも、スタジアムや自宅のテレビなどで、スポーツを「見る」ことが好きな人は多いのではないでしょうか。また、自分でスポーツを「プレーする」ことに興味はなくても、ボランティアやトレーナーとして、スポーツをプレーする人を「支える」ことには関心がある人もいるかもしれません。

スポーツを「学ぶ」ことも、立派なスポーツの楽しみ方の一つです。私は、神戸市が2010年より市内の中学生を対象として開催している「スポーツのリーダーシップ研修会」に講師として参加していますが、この研修会では、神戸市内81の中学校から各校の代表生徒が集まり、スポーツシーンにおけるリーダーシップや知識を学びます。身体を巧みに動かす能力を養うコーディネーショントレーニングや、スポーツ栄養学、安全なスポーツの実施方法など、様々な視点からスポーツの知識を伝えています。研修を受けた生徒たちが自校に戻り、学んだことをチームメイトや周囲に共有し、ノウハウを広め、生徒同士で教え合う環境が生まれることで、学校でのスポーツがより活発になることを期待しています。 

オリンピックやパラリンピックを見ていると感じるように、スポーツには人々を熱狂させ、感動させる力があります。これからも、スポーツの推進方法や人々にどう興味を持ってもらうかを研究し、スポーツの魅力を広め、自由な楽しみ方を伝えていくことで、誰もが人生に豊かさや潤いを感じられる社会の実現を目指していきます。

拡大する研究

誰もが手軽に健康になれる、鍵は「低酸素トレーニング」

森 寿仁准教授

環境人間学部所属(研究者情報はこちら

2019年、細胞の低酸素応答の仕組みを解明した研究がノーベル賞を受賞しました。低酸素に関する研究は様々な分野で取り組まれ、スポーツの世界はもちろん、近年では健康や医療の分野でも「低酸素トレーニング」が注目を集めています。私が取り組んでいるのは、従来の高地に滞在して行う方法とは異なり、専用の低酸素装置を使って一時的に低酸素環境を作り出し、短時間でも効率を上げる運動方法を開発する研究です。実際に本学の水泳部のトレーニングとして実施したところ、短時間でも大きな効果が認められることが確認できました。この低酸素装置があればどこでも低酸素環境を再現できるため、アスリートだけでなく一般の人々の健康づくりにも役立つと期待しています。実用化までの課題は残っていますが、この研究が進展し、より多くの人々の健康を支える日を楽しみにしています。


生体力学で解き明かす、身体のメカニズム

比嘉 昌 准教授

工学研究科所属(研究者情報はこちら

生体力学の視点で、コンピュータシミュレーションを用いた筋力計算の研究を進めています。例えば、普通に歩いても股関節には体重の3倍、走っていると5倍近くの力がかかると言われています。その負荷をシミュレーションで予測し、人工股関節などの医療機器の強度や固定方法の指標をメーカーや医師に提供することで、安全で高性能な機器の開発を支援しています。また、スポーツの分野でも体の仕組みを知ることは重要です。力のかかり方や動きを数値で可視化することで、パフォーマンスの向上やケガの予防、故障からの早期回復に役立ちます。さらに、モーションキャプチャシステムと組み合わせて使用することで、アスリート一人ひとりの動きにあわせた数値を得ることができ、サポート性能は格段に向上します。これからも人の健康やスポーツ活動を支えるため、研究に努めていきます。

注目の人 -Person-

手術不安を軽減するシミュレーション研究

現場の医師から要望を聞きながら、膝蓋骨の粉砕骨折手術の有効性を証明するためのシミュレーションや実験を行っています。3Dモデルや自作装置を使用し、様々な条件下で膝蓋骨に加わる力を計測。数字を活用し、手術の効果を評価します。この研究により医療現場の信頼性を向上させる他、スポーツのシーンでは怪我をしたアスリートに最適な処置を行い早期の競技復帰を可能にすることなど、幅広い効果が期待できます。手術の有効性を示し、患者さんの不安を取り除くことで、安心して回復に専念できる環境作りを目指します。

手術不安を軽減するシミュレーション研究

中川 恭佑さん

工学研究科 博士前期課程2年

一人ひとりに最適なトレーニングを追求

コンカレントトレーニングは、筋トレと有酸素性トレーニングを同じセッション内で行う方法であり、健康増進に効果的だとされています。しかし、筋力アップを重視する場合、筋トレ単独よりも効果が小さいという懸念点も。私は、運動における部位や様式を工夫することで健康増進と筋力アップの両面を最適化できると考え、理想的なトレーニング方法を研究中です。トレーニングは学校現場からトップアスリート、高齢者まで広く行われており、その理論を理解することは人々の健康を考えるうえでも重要です。幅広い対象に適した運動を可能にするためにも、これからも過去の事例や多分野の知見から学びを深めます。

一人ひとりに最適なトレーニングを追求

久下 潤さん

環境人間学研究科 博士前期課程1年

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