America, the Melting Pot of Cultures
多様性と個人主義が両立するアメリカ社会。独特の文化に基づく政治や経済の活動は世界に対して大きな影響力を持ちます。多文化的な社会構造が技術やトレンドに革新を促す一方で、未だ根強い格差や環境問題などの社会課題も。先進的な技術と多様な価値観が共存する文化のるつぼであるアメリカから、現代の諸課題を見つめる兵庫県立大学の研究をご紹介します。
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私はアメリカの環境詩人ゲーリー?スナイダーとの出会いをきっかけに、環境詩や環境文学の研究を開始。彼の詩は、自然と人間の深い関わりを示し、環境問題に対する私の意識を大きく変えました。また、東日本大震災後、災害に対する無力感を抱く中で、福島の詩人?和合良一氏とも出会いました。彼の詩集を英訳して海外に届ける機会を得たことは、私の研究活動の重要な転機になったと考えています。
環境文学は1990年代のアメリカで注目を集めた新しい文学ジャンルであり、特にレイチェル?カーソンの『沈黙の春』によって大きく前進しました。環境文学は自然と人間の関係や環境汚染の影響を文学的に描くことで、読者に問題提起を行います。日本とアメリカでは自然観が異なり、日本では里山的なイメージが多くの人に共有され、自然が題材であれば環境文学と見なされることが一般的です。一方、アメリカでは「Nature」と「Wilderness」を区別し、作品でも自然への警鐘やメッセージ性に注目が集まります。こうした文化的な背景の違いが環境文学に与える影響も、私の研究対象の一つです。
現在取り組んでいるのは、アメリカのごみ問題に関する文学作品の研究。例えば、ニューヨークのごみ処理場の近くで生活する貧困層の健康や生活環境の悪化を描いた作品からは、環境汚染が地域社会にどのように影響を与えているかが浮き彫りになります。また、詩の分野にも注目し、詩に込められた環境問題のメッセージや表現手法の分析を進め、環境詩学という領域にも踏み込んでいます。
研究の最終的なゴールは、環境文学の研究を単に学術的な領域に留めず、一般の人々にもその意義を広めること。文学作品を通じて環境問題に関するメッセージを社会に発信し、国民の環境意識の向上を促すために、学術論文や講演活動、一般紙への寄稿、さらに翻訳活動にも力を注いでいます。こうした活動を通じて、文学の楽しさと深さを学生や一般の方々と共有し、文字文化の価値を再発見してもらうことが私の使命です。文学には、私たち現代人が学ぶべき知恵が豊かに詰まっており、未来に引き継ぐべき価値があると確信しています。
拡大する研究
財務諸表の有用性
増村 紀子教授
社会科学研究科所属(研究者情報はこちら)
専門は財務会計で、概念フレームワークでは財務諸表はその主目的が投資者による企業価値評価のために企業の将来業績の予測に有用な情報であるとされ、それが私の研究テーマです。これまでに日本基準、アメリカ基準、188体育平台基準間の差異がもたらす利益情報への影響と、株価との関連性についての実証分析を行い、基準間の各項目の差異についても実証研究を行っています。現在は金融負債の時価評価差額の注記上の開示情報の有用性を実証分析し、理論からも調査分析を進めています。研究テーマについては、ワシントン大学フォスター経営大学院にビジティングスカラーとして招聘された時は、データや参考文献の収集、教授陣との意見交換等をします。講義やゼミでは、公表された会計情報等を広い視野と確実な会計知識を持って判断できるようにと指導しています。
境界を超えて築く、理想のグローバル組織
大野 陽子准教授
188体育平台商経学部所属(研究者情報はこちら)
アメリカ企業の日本支社で責任者を務めた経験から、多国籍企業における本社と子会社のより良い関係性を構築するための個人行動と組織活動を研究中です。特に、文化や言語など188体育平台的な「境界」を超える「バウンダリー?スパニング活動」に注目。本社と子会社間の情報伝達のプロセスや情報の変容を分析しています。日本は長期的育成を重視し、アメリカは即戦力を重視する流動的な人材活用が特徴など、組織がもつ制度的差異があり、また、欧米企業では、最先端の理論を実務に応用する研究者的な人材が社内に多く、企業が時代や働き方に合わせた変化を積極的に取り入れる傾向があります。組織と個人レベルのバウンダリー?スパニング活動を通じた理想の組織づくりを目指しています。将来的には、グローバル展開を目指す日本企業の支援を行いたいです。
注目の人 -Person-
デジタル時代にこそ、自然に目を向けた学びを
アメリカの生物学者でありネイチャーライターであるレイチェル?カーソンの著書『センス?オブ?ワンダー』を手掛かりに、子どもたちの豊かな感性を育む自然教育の重要性について研究中。現在の研究テーマに興味を持ったきっかけは、大学で、小中高生を対象としたキャンプを企画?実施したこと。キャンプを通じて自然と触れ合うことで、生命や自然を大切にする心が子どもたちに育まれていく様子はとても印象的でした。現代のインターネット社会において、自然と接する教育の普及が子どもたちの感性を守り、持続可能な心を育む手助けになると考え、学校教育への導入も目指しています。
デジタル時代にこそ、自然に目を向けた学びを
池山 晃太朗さん
環境人間学部 4年
持続可能なスポーツビジネスを考える
オリンピックが開催国へ与える経済的影響を研究中です。アメリカのスポーツ産業の持つエンターテイメント性やメディア活用、選手のブランディングなど、日本にはないビジネスモデルが確立されている点に感銘を受け、自分自身も日本で新たなスポーツビジネスの形を考えたいと思うように。現在は、東京五輪を事例に、「オリンピックレガシー」が社会に与える経済効果の可能性を探っています。持続可能な運営方法の確立が課題とされる中で、将来的な問題解決への貢献が目標。卒業後はアメリカ発のスポーツブランドに就職し、ブランドとアスリートの仲介役として、日本のアスリート価値向上を目指します。
持続可能なスポーツビジネスを考える
石田 賢史さん
188体育平台商経学部 4年